平等院(京都府宇治市)は14日、寄せ木造りの本尊・阿弥陀如来坐像(国宝、1053年)の制作過程で、頭部の後ろ半分を切って下にずらし、耳の位置を下げる微調整をしていたことが分かった、と発表した。寄せ木造りでは、鎌倉時代初期に運慶、快慶が芸術性を高める微調整を始めたとされていたが、同坐像の構造解明で、この手法の始まりが約150年さかのぼることになった。平等院は「顔のバランスが悪かったため、途中で修正したのではないか」と推測する。寄せ木造りは仏像各部を別々の部材で作って組み立て、大きな像を作る方法。一木(いちぼく)造りに比べ途中での修正も容易で、同坐像の作者・定朝(じょうちょう)が確立した。運慶・快慶が部材ごとの修正を活用し、細やかな表現を追求したとされるが、平等院の2003~07年の大修理に伴うX線撮影や三次元測定で、同坐像の両耳部分で複数の部材が複雑に組み合わされ、鉄製のかすがいで固定されていることが分かった。同坐像の頭部から胴体にかけては、前半分、後半分とも2本ずつの角材(一辺約40センチ)で作られている。ところが、前半分は頭部と胴体がつながっているのに、後ろ半分は、頭部を一旦切り離して2センチ下にずらし、再接合していた。これによって前頭部側の耳(耳の前半分)が後頭部側より高くずれたため削り取り、別の部材を後頭部側に合わせて張り付けていた。ずらしたことで後ろ半分がくぼんだ頭頂部も別の部材で埋めていた。寄せ木造りでの微調整について、浅湫毅(あさぬま・たけし)・京都国立博物館研究員は「造形過程における細やかな変更は、東大寺南大門の仁王像(運慶)など鎌倉時代の仏師による事例がよく知られているが、同様の微調整が定朝の頃に既に行われていたとは興味深い」としている。
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